哲学を持ったリーダー |
松山幸雄元朝日新聞論説主幹から、「久しぶりにケネディについて書きました」と小冊子を送っていただいた。 株式会社富士ゼロックス総合教育研究所 「xchnage per forma」 winter 2007 vol.112 (2007年1月15日発行) その一部を紹介します。 ***************** 【哲学を持ったリーダー】 私が政治外交記者としてじかにカバーした政治家の中で、生きている時から心服し、そしていまだに「もっと権力の座についていてほしかったなあ」と残念でならない人物が二人いる。 一人は石橋湛山首相、もう一人はJ・F・ケネディ米大統領である。両者に共通しているのは、豊かな教養、リベラルな哲学、毅然としたリーダーシップの持ち主、ということで、もしもこの二人がもう少し政界のトップに君臨していたら、日米の政治はそれぞれ随分と違ったコースを辿ったに違いないと思う。 私はたまたま“番記者”として、石橋首相が風邪を引き、わずかに3ヶ月で辞任するきっかけとなった早稲田大学の祝賀会(吹きさらしの庭園で、外套をぬいで立っていた)に居合わせた目撃証人である。 またケネディ大統領が暗殺された当日、テキサス州ダラスの現場から原稿を吹き込んだ唯一の日本人記者である。それだけに、神様は何と残酷なことをするのか、といまだに恨みがましい気持ちを拭いきれないでいる。 (中略) ケネディ大統領も在任二年余と短かったが、それでもキューバ危機のさい示したリーダーシップは、米国政治史に燦然と輝いている。ソ連がキューバにミサイルの発射台を設置しようとしている、との情報をつかむや、断固撤去を要求し、一方で爆撃をしたがる軍部を抑え、方や友好国の支持をとりつけ、国民に対しては結束を呼びかける名演説を行い―その颯爽とした指導者ぶりは、いまだに私の目に焼きついている。 私にはとくに、キューバ危機を乗り切った後、平和共存の必要を訴えた「平和の戦略」演説の格調の高さが忘れられない。「歴史はわれわれに、国家間の敵意は、個人間と同様、永遠に続くものでないことを示している。わが好むもの、好まぬものが、いかに固定しているように見えようとも、時と事態の推移とは、国家間にも隣人間にも驚くべき変化をもたらすものである。されば忍耐心を以て事に臨もうではないか」―ベルリンの壁の崩れたいま読み返すと、改めてその卓越した見識に敬服せざるを得ない。 日米とも、哲学的思考、リーダーシップという点で、石橋湛山、ケネディを凌ぐ政治家が出ていない―というのが、老ジャーナリストの嘆きである。 *「xchnage per forma」のバックナンバーをご希望の方は、メールにてperforma までお問い合わせ下さい。 |
by kennedy-society
| 2007-04-22 11:16
| 松山幸雄
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